退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】近田春夫『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』(リトル・モア、2021年)

近田春夫さんは高校時代に私に影響を与えたひとり。この本は、その近田さんの幼少期から現在までの半生を語りおろしている自伝。読者にフランクに語りかけるスタイルは構成者の功績だろうがとても読みやすい。

当時ラジオ少年だった私は、近田さんがやっていた深夜ラジオ「パックインミュージック」を楽しみに聞いていた。この本でも触れられているが、以前やっていた「オールナイトニッポン」の焼き直しだったというようなことを書いてあり、ちょっとガッカリ。まあそうだよね。

オールナイトニッポン」を担当していたのも知っていたが、当時地元では民放ラジオ局が1局しかなく、深夜放送はTBSラジオをネットしていたので、「オールナイトニッポン」は雑音まじりで聞くほかなかった。ようやくちゃんと聞いたのが「パックインミュージック」だったいうワケ。歌謡曲の楽しさや、筒美京平のスゴさなどを知ったのも、この番組だった気がする。

この番組を聞いているうちに、「やっぱり東京に出ないとダメだな」と勘違いして、無理を言って大学進学時に上京。地元の駅弁大学に行くことを考えると、ここで人生大きく変わったなと思う次第。

まあ個人的な話は別にしても、この本は近田さんの視点から日本のミュージックシーンを切り取った本とも言える。貴重な資料である。ここまでやるなら近田さんの年譜とディスコグラフィーぐらいは巻末にほしかったなあ。

本を読みながら紙面に登場する曲を聞くという読み方をしていたが、意外にサブスクにない曲が多いのには閉口した。サブスクには何でもあるというわけでもないだろうが、それにしても埋もれている楽曲が多いことを再確認する結果となった。

例えば、近田さんがプロヂュースした風見りつ子 (律子とも)のアルバムはなぜないのか。ゴニョゴニョすれば聞けるがちゃんとしたサブスクで聞きたいものだ。また近田さんがプロデュースした姿月あさとのアルバムもちゃんと聞きたい。ほかにもじっくり聞きたい楽曲は多い。いずれ「近田春夫全集」みたいな企画盤が出ないものだろうか……。

いずれにせよ、この本は私にとっては知りたかった情報満載の自伝。これからも読み直したい。

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