退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】日髙のり子『天職は、声優。』(主婦の友社、2022年)

声優・日髙のり子のデビュー40周年記念本を読んでみた。

本を手にとって「あれ」と思ったのは、表紙がデビュー40周年記念CDのジャケットと同じだったこと。せっかくなら新たに描き下ろしてもらえばいいのに思ったが、「大人の都合」があるのだろう。

デビュー40周年なのだから当たり前なのだが、長いキャリアにあらためて驚かされる。

私がアイドル歌謡が好きだということもあるが、NHKレッツゴーヤング」で「サンデーズ」のメンバーだったアイドル時代が気になった。綺羅星のようなサンデーズのメンバーを目の当たりにした絶望感のようなものが感じらた。

個人的には、2ndシングル「もう一度・ブラックコーヒー」(1981年)は名曲だと思うが、EPのジャケットを見て「これはないわ」とつぶやいたことを思い出す。

この本では言及されていないが、ラジオ番組「笑福亭鶴光オールナイトニッポン」で浜田朱里坂上とし恵らとともに「ガケっぷちトリオ」と呼ばれていたことも懐かしい。当時浜田朱里を推していたのだが……。

アイドルとしては大成しなかったノン子さんが、アニメ『タッチ』の浅倉南を演じる声優に大抜擢されてからの活躍はご存知の通り。時代を追って作品ごとにページが割かれていて懐かしく読んだ。

アニメの声優以外の仕事の裏側も紹介されていた。とくに「一つのキャラにふたりの役者」と題された人形劇、そしてETCの機械音声に挑戦したくだりはおもしろい。パナソニックの担当者がファンだったのかしらん。

錚々たる関係者たちからのメッセージやアンケートが紹介されてて、みんなに愛されていることが伝わってくる。巻末にはデビュー40周年記念のイベント「Non Fes」のフォトレポートが載っていた。楽しそうだ。なかに井上ほの花が「もう一度ブラックコーヒー」を歌ったという一枚があった。映像があればぜひ見てみたい。

声優、とくに女性声優の世界はレッドオーシャンだと言われる。そのなかで「天職」だというほど成功したノン子さん。そのキャリアのなかには、声優に限らず、あらゆる職業人にも参考になることがあるだろう。オススメです。