退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

ドキュメンタリードラマ「ふたりのウルトラマン」を見る

連休中にNHKBSプレミアム放映されたドキュメンタリードラマ「ふたりのウルトラマン」(脚本・演出:中江裕司)を見た。今年は「沖縄本土復帰50年」を記念して、沖縄関連の企画が目白押しだが、本作もそのひとつ。

特撮ドラマ「ウルトラマンシリーズ」をつくった金城哲夫上原正三の生涯に迫る人間ドラマ。NHKお得意のドキュメンタリードラマという体裁で、当時の関係者たちの証言を交えて進行する。

1972年の沖縄本土復帰直前、特撮ドラマ「ウルトラマンシリーズ」には、金城哲夫上原正三という沖縄出身の若き脚本家が参加していた。ドラマは、アメリカの統治下、沖縄からパスポートを持って上原正三(佐久本宝)が、円谷プロダクションで活躍していた金城哲夫満島真之介)を頼って上京する……。

NHKパワーにより円谷プロダクションの映像をふんだんに盛り込んでいるので見栄えがするが、ドキュメンタリーと称するには証言すべき関係者に故人が多く、とっくに機会を逸しているは惜しい。

沖縄在住の中江裕司が脚本・演出を担当し、主演ふたりが沖縄出身という布陣で沖縄からの視点でつくられているドラマだが、もうひとつ沖縄から見た、日本と沖縄の関係が伝わってこない。沖縄方言で「日本人に負けるな」という表現が出てくるが、当時の沖縄の人たちは"日本人”を恨んでいたのだろうか。

これほどまでに円谷プロダクションのサポートが厚いのならば、「ノンマルトの使者」などの金城哲夫脚本の作品を詳細に読み解いて「沖縄と日本との関係」を炙り出すこともできたはずだ。やはり作品を通して金城たちの思いを表現してほしかった。

また特撮ドラマ「マイティジャック」の失敗の責任を取らされるかたちで、失意のうちに金城は沖縄に戻り、後に沖縄海洋博のイベントプロデューサーの仕事に没頭することになる。しかし沖縄海洋博が沖縄の人たちの反対にあっているところもわかりにくい。説明不足。

余談だが、私はのちに海洋博のシンボルだった「アクアポリス」を見たことあるが、錆びがひどく巨大な廃墟のようで怖かった記憶がある。

「沖縄本土復帰50年」ということで実現したドラマだが、結局、沖縄の立場がよくわからないままだった。ウルトラマンシリーズの裏話ならば、実相寺昭雄の小説をドラマ化した「ウルトラマンをつくった男たち 星の林に月の舟」(1989年)をオススメしたい。

楽しみにしていたドラマだったが、特撮ファンとしてはやや期待はずれというところが正直なところである。