かつてジャニーズ事務所に所属していた、男性アイドルグループ「少年隊」を論じた本。
少年隊は、錦織一清、東山紀之、植草克秀の3人組。デビュー曲は「仮面舞踏会」(1985年)だった。ジャニー喜多川をして、生前、これまで自らが作り上げたグループのなかで「最高傑作」と言わしめた。この本を読んでいくと、数あるジャニタレのなかでも彼らが特別な存在だったことがよくわかる。
この本のなかでたくさんの人が少年隊について語っているが、なかでも巻頭のマキタスポーツ×スージー鈴木の対談が秀逸。2021年秋に惜しまれながら終了した音楽番組「ザ・カセットテープ・ミュージック」(BS12)が思い出される。
ほかには馬飼野元宏による「作家でたどる少年隊ミュージック」という評論は、ジャニーズポップスの系譜のなかで少年隊の位置づけを網羅的に捉えていて参考になった。
ツツミストの私としては、シングル曲のリストに作曲家・筒美京平の作品がずらりと並んでいることに注目したい。歌謡曲ファンとしてはお宝のような楽曲ばかりで唸らされる。
しかし少年隊は数字的にセールスはそれほどでもなかったことも事実である。ちょうど音楽業界の端境期だと本書では評されているが意外である。時期的に不運のグループと言えようか。
本書は、令和のこの時期に少年隊に注目したナイスな企画本。巻末の全シングル・アルバム批評も貴重。ただしこの本のせいではないが、Spotifyなどのサブスクで少年隊の楽曲が聞けないのは残念。なんとかならないのか。
欲を言えば、メンバー3人のロングインタビューが収録されていたらとどうしても思ってしまう。画竜点睛を欠くというのはこのことだろう。