【読書感想】北畑淳也『マイナ保険証 6つの嘘』(せせらぎ出版、2024年)
一部の人たちから猛反対があった「マイナ保険証」の問題点を整理した良書。さらに踏み込んで「マイナ保険証」が日本の政治や社会の劣化を象徴していると看破している。
多々の問題点が指摘されるなか、2024年12月から従来の保険証は新たに発行されなくなり、「マイナ保険証」を基本とする仕組みに移行している。本書で明らかにされた問題点の多くは解決されることなく、政権が移行を強行したカタチになった。
本書で挙げられている問題点に正面から議論できなかった政府の対応はどうかと思うが、先の総選挙でも論点にならなかったのは民主主義の限界が露呈したとも言える。
とは言っても、もはや「デジタル化」の社会的な流れに抗えるわけもなく、旧来のような様々な保険組合が発行した「紙の保険証」が医療現場にまかり通るのも、あまりにも非効率に思える。本書では、マイナ保険証は医療の質の向上に寄与しないと結論付けているが、これも運用次第ではないか。
いずれにせよ健康保険制度に関するデータをデジタル化することは焦眉の急であり、それを如何に国民の健康のために役立てるかは行政や医療危難、有権者である患者たちの知恵に依るというべきだろう。あまりに楽観的かもしれないが、今回のマイナ保険証への移行は、そのための一歩だと信じたい。
あと個人的には確定申告時の医療費控除が簡略化されるだけでもメリットあるとは思う。

