退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

「映画秘宝」の最終号を読む

今年2月に「映画雑誌『映画秘宝』が再び休刊することになった」と版元の双葉社が発表した。そのとおり、5月号が事実上の最終号となった。

スキャンダルの多い雑誌でだった。シネフィルにまともな人間はいないのだろうかと、都度嘆息を漏らしたものだが、長年読んでいた雑誌がなくなるのはさみしい。

最終号の特集は「最後のサイテー映画2022」。「サイテー映画」とは、町山智浩のネーミングだと言われているが、単に見るに堪えないワースト映画ではなく、そこに愛すべき何かが含まれているのがミソである。この「サイテー映画」を最終号で特集するのは、なんとも「映画秘宝」らしい。

このような「映画秘宝」らしいノリも嫌いでなかったが、長年読んできたのは日本映画の関係者を丹念に追ったインタビュー記事が好きだったからだ。最終号では、松竹のプロデューサーだった櫻井洋一のインタビューが載っていた。「必殺シリーズ」の手掛けた名プロデューサーである。

インタビューはまだつづく予定だったようだが、「『映画秘宝」の休刊により今回打ち切りです」と堂々と書かれていた。なんとも惜しい。

最終号ということで、永久保存版!「映画秘宝27年の記録」というリストが載っていた。雑誌だけでなく、洋泉社時代に出版された「別冊映画秘宝」というさまざまなムックのリストもあった。「特撮秘宝」なんて好きだったなぁ。

雑誌記事だとすぐに泡のように消えてしまうが、ムックならば書籍扱いで図書館に所蔵される場合もある。いまでも「別冊映画秘宝」を借り出して読めるのはとても助かっている。

もはや編集部にはムックを出す体力も残っていないのかもしれないが、今回の櫻井洋一のインタビュー記事も何らかの形で後世に残してほしいものだ。過去の出版物はなんとか電子化してKindleで読めるとうれしい。

表紙に「THE LAST ISSUE」の文字が踊る最終号を手元に置いてそんなことを思った。