少し前に、なにかのラジオ番組で紹介された大島弓子の短編「ダリアの帯」を読んでみた。たしか近田春夫と小泉今日子が月イチで放送しているラジオ番組のコーナーだった思うが、どちらが持ち出したのか記憶が定かではない。初出は少女漫画誌『ぶ~け』(集英社)1985年8月号。
若くして結婚した夫婦。結婚から3年後、妻は階段から落ちて流産したことをきっかけに奇行が始まる。病状はエスカレートしてすっかり手がつけられなくなる。夫は日常生活に大きなストレスを感じるようになり、周りからは離婚を勧められる。しかし、夫は現実から逃げることをやめることを決意し、会社を辞めて山奥で夫婦二人で自給自足の生活を始めるが……。
この不思議なタイトルの「ダリアの帯」は、流産した子のために喪服にダリアの刺繍帯を着用しようとするシーンから取られている。今回読んだ短編集には、作品のあとに「喪服のダリアの刺繍のある帯をしめて ああ場ちがいと思ったゆまがきっかけになって描いたマンガ」と、夢が元になったことが紹介されていた。
この作風は、大島の代表作である『綿の国星』にも通じるなと思いながら読んだが、それよりも谷山浩子の初期作品の世界観を思い出して懐かしく思った。