Amazonプライム・ビデオで「ゴジラ」シリーズが長い間配信されて重宝していたが、いよいよ配信終了というので、最後に映画『ゴジラ』(1984年、監督:橋本幸治)を見ることにした。特技監督は中野昭慶。
1975年公開の『メカゴジラの逆襲』以来9年ぶりに製作され、「1954年のゴジラ出現から30年ぶりにゴジラが現れた」という設定である。昭和ゴジラはあっさりなかったことにされて、ゴジラは再び凶暴な人類の敵として描かれている。
監督の橋本幸治は、映画『日本沈没』では助監督を務めてDVDにオーディオコメンタリーを残しているが、本作はその流れをくむSF災害パニック映画の色合いがつよい。さらに米ソ冷戦の末期である国際情勢を反映して、ソ連原子力潜水艦やアメリカの戦略防衛構想の影響がシナリオに取り入れれていて、骨太な作品となっている。
ただし、ゴジラが井浜原子力発電所を襲うという画期的なシーンがあるものの、比較的あっさり処理されているのは物足りない。科学的考証をきちんとして原発事故のリアルな恐怖を訴求することができれば、SF映画としての評価は格段に上がっただろう。
特撮ファンとしては、対ゴジラ兵器「スーパーX」が登場するのも見逃せない。翼や突起物がほとんどないのっぺりとしたデザインが印象的。かっこいい。ちなみに『ゴジラvsビオランテ』(1989年)には「スーパーX2」が登場している。ただゴジラを単に原子炉をみなして、核反応を抑制するカドミウム弾が効果を発揮するという設定はどうなのだろう。
また出演者ではヒロインの沢田靖子が印象に残る。東宝シンデレラの沢口が東宝の看板映画の「ゴジラ」に出演するのは必然である。しかし相手役の田中健とのコンビは美男美女で見栄えはするが、どうも演技は垢抜けない。これで本当にいいのかなと思ったものだ。
他には 小林桂樹をはじめ小沢栄太郎、内藤武敏、金子信雄、加藤武、鈴木瑞穂といった大物俳優が政府高官役で大挙出演していたのはそれだけに見応えがあった。
そしてゴジラを三原山の火口に誘導して、人工的に噴火を誘発してゴジラを落下させて葬る(まあ死んでないんだろうけど)エンディングもなかなかいい。
本作は昭和ゴジラから「平成VSシリーズ」への橋渡しと言える作品であるが、個人的にかなり好きな作品である。Amazonプライム・ビデオでの配信終了を前に是非見直してみたくなった一本だった。