退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『斬る』(1968) / 痛快時代劇は岡本喜八監督の真骨頂

新文芸坐の《映画本格デビュー60周年 祝・文化勲章受章 第三回 仲代達矢映画祭》で映画『斬る』(1968年、監督:岡本喜八)を鑑賞。山本周五郎の『砦山の十七日』を原案にしている。

侍を捨てた弥源太(仲代達矢)が、ある藩のお家騒動に巻き込まれ若い侍たちを助ける。黒澤明の『椿三十郎』を思わせる時代劇だが、侍批判というか反権力を思わせる設定は岡本監督らしい。

テンポのよい痛快時代劇は岡本喜八監督の真骨頂。娯楽映画の教科書と言っても過言ではない。2時間の尺に目一杯詰め込んでいるが破綻していない脚本は見事。

弥源太が途中で敵に捕まり足腰が立たないほどに傷めつけられるので、最後に派手な大立ち回りで敵を一掃するようなシーンはないが、狭い茶室で満身創痍の弥源太と黒幕の家老(神山繁)が対決するクライマックスは殺陣がユニークで印象に残る。

鑑賞中に意外に細部まで覚えているなと思ったら、一昨年のシネマヴェーラ渋谷岸田森特集で観ていたことにあとで気づいた。別のプログラムを見たほうがよかったかも……。でも面白かったのでよかったことにしよう。

海外では『Kill』というタイトルが付いているらしい。「斬る」と「Kill」を掛けているわけだが、ちょっと面白い。

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