退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『影武者』(1980) / 黒澤明監督によるスペクタル巨編

先日、隆大介さんが亡くなったと報じられたとき、そういえば黒澤明監督の『影武者』(1980年)に織田信長役で出てたなと思い出し、見直してみたくなった。

武田信玄の影武者となった泥棒(仲代達矢)の数奇な運命を描く。黒澤監督の作品のなかでは唯一、実在の戦国武将の逸話を取り上げた歴史映画。


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黒澤明監督の『乱』の製作費を軽減するために企画された作品だという。『乱』は難解な作品だったが、この『影武者』はシンプルでわかりやすい。これが奏功したのか、当時歴代日本映画の興行成績1位を記録している。

この映画は勝新太郎の降板劇でも話題となった。勝新太郎が主演を務める予定だったが、撮影開始直後に黒澤と衝突して降板している。日本映画史上に残る事件のひとつである。まあソリは合わないだろうと素人ながらに思う。代役に起用された仲代達矢も自分なりに演技を構築しているが、やはり勝新太郎で見たかったと思うのは映画ファン共通の思いだろう。

映像面では、終盤の「長篠の戦い」が壮観。家督を相続した武田勝頼が、長篠で織田・徳川の連合軍と対する。三段構えの鉄砲隊の前に武田騎馬軍がなすすべもなく惨敗する。死屍累々となった戦場のシーンが凄まじい。歴史スペクタル映画の面目躍如。

こうした影武者モノの見どころは、どのようにして影武者であることが発覚するのかという点にある。本作では子どもは手なづけたが、愛馬を騙すことはできなかった。さらに側室に上杉謙信につけられた刀傷がないことを見破られてしまい、お役御免となる。馬と女はどうにもならない。

余談だが影武者モノでは、西田敏行が、徳川家康の影武者を演じたテレビドラマが面白い。テレビ東京で2014年に放送された新春ワイド時代劇影武者 徳川家康」である。こちらは側室たちと上手くやっていたのに……。機会があれば是非。オススメです。