退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『熱海殺人事件』(1986) / つかこうへいの戯曲の映画版だけど…

DVDで映画『熱海殺人事件』(1986年、監督:高橋和男)を鑑賞。つかこうへいの初期の代表的戯曲の映画化作品。脚本は原作者のつかが担当している。主演は仲代達矢

熱海で発生した平凡な殺人事件の捜査を命じられた部長刑事・二階堂伝兵衛(仲代達矢)は、証拠を捏造して彼一流の美学に沿ってドラマティックで美しく文学的な事件に仕立て上げようとするが……。


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ハイテンションの仲代達矢の演技がすごすぎる。もはや彼のための映画であり、すべてを持っていく勢いがある。「いいか!犯罪を犯しただけで犯人になれると思うなよ!」というセリフはサイコー。

たしかに仲代はすごいのだが、映画としてこれでいいのかという疑問はある。やはり舞台で見るべき話だろう。

見るべき点のほとんどない映画だが、見どころをさがすと、仲代の部下であり愛人役の志穂美悦子が白ブラウスを脱いで下着姿になるシーンぐらいだろうか。個人的な趣味だが、この場面だけは加点したくなる。

つかこうへい原作の映画化作品としては、深作欣二監督による『蒲田行進曲』(1982年)がある。『蒲田行進曲』が深作監督の豪腕により、映画らしい作品に仕上がってのに対して、どうしても見劣りがしてしまう。舞台と映画の違いを考えるのにいい材料ではないか。

蒲田行進曲』のヒットに触発されて企画されたのだろうが、二匹目のドジョウのいなかった。そんな映画である。