退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『二百三高地』(1980) / 日露戦争を描いた東映による超大作

YouTube東映シアターオンライン」で配信されていた、映画『二百三高地』(1980年、監督:舛田利雄)を鑑賞。日露戦争の旅順要塞攻略戦を描いた大作。東映映画。

タイトルどおり、日露戦争の旅順要塞攻略戦における、203高地を巡る攻防戦を描く。第三軍の司令官・乃木希典仲代達矢)を中心として、戦局が大局的に描かれる。人間ドラマとしては、乃木と児玉源太郎丹波哲郎)の親友だったふたりの心の葛藤をひとつの軸する。さらに小学校の教師から召集された小賀少尉(あおい輝彦)と、小賀と夫婦の契りを結んだ佐知(夏目雅子)の関係を絡めて物語が展開する。


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上映時間は3時間超えと、公開時は映画館では途中で休憩があったいうほど長い。まず日本兵がこれほど死ぬ映画はないのではないか。機関銃や重砲で防御された堅牢なロシア要塞に歩兵が突撃を繰り返すのだから、甚大な被害がでるのは当たり前。あっという間に戦場が死屍累々となり、その映像に圧倒される。

ちなみに戦闘シーンは伊豆大島でロケされたらしいが、CGがない時代にあれほどの映像が撮れるのだから日本映画も大したもの。後の映画『プライベート・ライアン』でノルマンディー上陸作戦のシーンに匹敵すると言ってもいい。

軍事的なことに明るいわけではないが、やたらと不毛な銃剣突撃を繰り返すばかりの乃木将軍が無能の思えてしまうのは仕方ない。結局、児玉が実質的に指揮を執るようになってから臼砲を陣地転換して、映画の中ではあっさり203高地を確保してしまう。乃木の作品は何だったのかと思ってしまう。作戦についての軍事的な説明が映画のなかでほしいところ。

脚本は骨太の戦争映画だったのだろうが、さだまさし防人の詩」を使うなどおセンチな演出になってしまった点は否めない。とにかく、「防人の詩」の破壊力ですごい。画面に大きく「海は死にますか 山は死にますか」などと歌詞が映されるなど過剰な演出に失笑していまう。それに「防人」というが、日本が攻めてるのになぁと、昔見たときにおかしいと思ったことを思い出した。

また戦闘シーン以外では、やはりヒロイン夏目雅子の美しさが目を引く。さすがに戦争シーンばかりでは、間が持たないのだろう。ただ夏目はあおい輝彦と結ばれるのだが、濡れ場があるわけでもなくつまらない。どうせならここで脱いでおけよと思ったものだ。また小賀は金沢の小学校に勤めているという設定だが、映画の中で金沢らしさがあまり感じられないのは物足りない。

それでも全体としては見どころは多いし、一度は見ておく価値がある。この時代あたりまでは日本映画がまともな大作をつくれたことを確認できる作品でもある。