退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『日本の悲劇』(2013) / 父と息子の二人芝居。悲劇にちがいないがタイトルは誇大すぎる

DVDで映画『日本の悲劇』(2013年、監督:小林政広)を鑑賞。木下恵介監督の同名映画とは別物。白黒映画。タイトルに惹かれてみてみたが、家族の悲劇ではあるが、「日本の悲劇」とうのは大袈裟ではないか。

日本の悲劇 [DVD]

日本の悲劇 [DVD]

  • 発売日: 2015/06/10
  • メディア: DVD

肺がんで余命いくばくもない父・不二男(仲代達矢)が延命治療を拒否して退院して帰宅する。不二男の妻(大森暁美)はすでに亡く、息子・義男(北村一輝)との二人だけの生活が再びはじまる。義男は失業し、それを機に妻・とも子(寺島しのぶ)は家を出ていった。義男はつい愚痴が出てしまう。それを黙って聞いていた父は、ある日、部屋に閉じこもってしまうが……。


映画『日本の悲劇』予告編

2010年に話題になった年金不正受給事件に題材をとってつくられた映画。BGMを廃し、生活雑音だけで撮られた演出は生々しい。

登場人物は4人だが、回想パート以外はほとんど父親と息子の二人芝居。仲代達矢の抑えた演技は悪くないが、映画は終始父親の回顧趣味をもとにつくられていていて、息子の視点が捨象されている点は物足りない。むしろ息子の人物描写を掘り下げて、失業の経緯、再就職のためにあがく姿、そして息子家族を描いたほしかった。

父の死後、息子がスーツに着替えるの姿から、再就職が決まったのかと思いきや、まだ休職中で「あれ」と思った。また中盤で東日本大震災が描かれ、息子の妻と連絡が取れなくなる。ラストでかかってきた電話は妻からのものなのか。光明かと思わせぶりのまま映画はおわる。

この映画は終始ドラマチックではなく、感動を誘うような演出もない。観客は他人事のように傍観者となるほかない。思い切りはいいが、なぜこの映画をつくったのか理解に苦しむ。