退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971) / 岡本喜八監督が描いた沖縄戦

少し前になるが、新文芸坐の《映画を通して歴史や社会を考える(1) あの戦争を忘れない》という企画で映画『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年、監督:岡本喜八)を見てきた。好きな映画のひとつ。何年かに一度みたくなる映画である。

併映は『激動の昭和史 軍閥』 (1970年、監督:堀川弘通)だった。この二本立ては、同じ新文芸坐で2014年にも見ていた。これにはあとで気がついたが、この歳になると好きな映画はあまり変わらないようだ。

この映画は、太平洋戦争末期の沖縄戦を描いた戦争映画だが、当時はCGなどなかったが、戦争の悲惨さを伝えることには十分成功している。以前の記事にも書いたが、好きなシーンを2つ挙げておく。

ひとつは、高橋悦史が、米軍が沖縄に殺到する様子を「船が多すぎて海が見えない」「船が七分に海が三分」と報告する場面。アニメの元ネタにもなっている。

もうひとつは、八原高級参謀(仲代達矢)が、軍の首脳が自決したあと、民間人の服装で米軍に投稿するシーン。米国への留学経験もある矢原が"Don't shoot."と流暢な英語で米兵に呼びかけて投稿する場面。

この映画は沖縄の人たちが、もう勘弁してくれとばかり次々に犠牲になっていく。米軍に突っ込んで玉砕する場面もあるが、多くは自決を選んで死んでいく。映画が公開された1970年は沖縄返還前である。この映画を見て沖縄の人たちはどう思ったであろうか。


BATTLE OF OKINAWA 激動の昭和史 沖縄決戦 - Original Trailer

沖縄戦の総括はいろいろできるだろうが、日本軍の沖縄戦での粘りで大きな犠牲を出したアメリカ側は、地上戦を避けるためついに原爆投下を決断する。2つの原爆投下を経た後、ソ連侵攻によりようやく降伏するという日本首脳の決断の遅さは致命的だった。

この時季になるとテレビや映画館で戦争を扱う企画が開催されるが、いまだに考えさせられることは多い。

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