退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『激動の昭和史 軍閥』(1970) / 小林桂樹が演じる東條英機

少し前になるが、新文芸坐の《映画を通して歴史や社会を考える(1) あの戦争を忘れない》という企画で映画『激動の昭和史 軍閥』(1970年、監督:堀川弘通)を見てきた。「東宝8.15シリーズ」の第4作。

併映は『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年、監督:岡本喜八)だった。この二本立ては、同じ新文芸坐で2014年にも見ていた。「沖縄決戦」では牛島満中将役だった小林桂樹が、本作では東條英機を演じていて、小林桂樹デーともいうべきプログラムだった。

二・二六事件から終戦までの期間を東條英機小林桂樹)を主人公にして、戦時中の派閥争い、マスコミの姿勢などを描いてた戦争映画。戦局が悪化するなか、東條のまわりにイエスマンしかいなくなり、徐々に偏狭になっていく東條の様子が見どころ。

また「竹槍では間に合ぬ」という記事を書いた新聞社の記者(加山雄三)が、東條の逆鱗に触れ懲罰召集されるという「竹槍事件」が取り上げられているところもにも注目したい。

東條が追い込まれるなか、近衛文麿神山繁)、木戸幸一中村伸郎)、米内光政(山村聡)たちがサロンに集まり、余裕たっぷりで今後の政権について話し合っている場面が印象的で、このあたりが「軍閥」というタイトルの所以だろう。とくに木戸内大臣を演じた中村伸郎の演技は絶品。

ただし東條にフォーカスしたわりには、彼が空回りしている様子しか描かれず、人物描写に乏しく人物像がはっきりとしない。人間としての東條英機が見えてこないのは不満。

この映画は原爆投下の映像で終わるが、東條を取り上げるのならば、終戦後の自殺未遂、そして東京裁判で戦争責任を追及され絞首刑になるまでを描ききってほしかった。

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