新文芸坐の《日本映画 匠の技Vol.4 白黒映画の美学 日本映画黄金時代に到達した、光と影の極みを堪能する11日間》という企画で映画『六條ゆきやま紬』(1965年、松山善三監督)鑑賞。撮影の岡崎宏三をフューチャーした2本立て。併映は『いのち ぼうにふろう』(1971年)。
温泉芸者あがりのいね(高峰秀子)は、ゆきやま紬(つむぎ)を織る由緒ある北国の旧家に嫁ぐが、出自のため姑(毛利菊枝)をはじめ親戚筋から蔑まれる。夫(神山繁)が時流に乗れず事業に失敗して自殺したあとも伝統を守るために奮闘する。しかし事業が経営難に陥るなか、再建と引き合えとなる形で家から追い出されるが……。
昼メロかと思うベタで陳腐な脚本で、これが「田舎の閉鎖的な旧家ですよ」というステレオタイプの物語が延々と続く。ラストで噂をたてられた使用人のフランキー堺と高峰は駆け落ちすように家を出るが、これでは「噂に負けたことになる」と言いつつフランキー堺は汽車から途中下車して終劇。どうも意味が分からない。これからどうするんだろう。
出演者のなかで、ちょっといいなと思ったのは、雪中を鈴を鳴らしながら馬ゾリを駆る小林桂樹。法要の場に乗り込んで猟銃をぶっ放す。かっこいい。というかヤバイ。
またみの笠で顔を隠した謎の集団にも注目した。陳腐な脚本の反動なのか、シュールな演出や美術が用いられていることは特筆できる。
まあ物語としては、登場人物には共感できないし、全編ジメジメしていてあまり面白くない。それでも雪の映像美は圧倒的。今回の白黒映画特集にふさわしい作品といえるだろう。一度は映画館のスクリーンで見ても損はない。