新文芸坐の《サヨナラだけが人生だ 川島雄三の世界》で、映画『人も歩けば』(1960年)を鑑賞。白黒映画。
ジャズドラマーの砂川桂馬(フランキー堺)は、好きな将棋が縁で銀座裏路地の質屋に婿養子に入るが、義父はあっけなくポックリ。質屋経営は上手くいかず、姑(沢村貞子)と嫁(横山道代)にイジメられて、ついに桂馬は家出する。ドヤ街のベットハウスでの生活で様々な人たちにめぐり逢い貧乏生活を謳歌する。そこに突如、桂馬に莫大な遺産が転がり込むという話がくるが……。
娯楽喜劇に徹した川島雄三らしい作品。主演のフランキー堺はアバンタイトルの軽妙なナレーションも含めて絶好調。加えて私立探偵を演じた藤木悠の怪演が光る。テレビドラマ「Gメン'75」の刑事役の印象が強いので、本作での芸風に驚いた。
この映画のラストはちょっと弱いような感じるが、ドラマー出身のフランキー堺がドラムを叩いているラストシーンは貴重。さすがに堂に入っている。
この映画のなかに「オリンピック・ホテル」建設用地が出てくる。1964年の東京五輪の需要を当て込んだホテルである。来年再びオリンピックが東京で開催されるのはめぐり合わせとうべきか。
私はさすがに当時の東京の街は知らないが記録映像としても貴重。日本経済は「失われた20年」などと言われているが、さすがにこの頃の東京に比べたら、今の東京は別世界のように発展している。だた、わずか60年足らず前の街の面影がまるで残っていないのはさみしいような気もする。