退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『上を向いて歩こう』(1962) / 坂本九主演の青春映画と思いきや…

Amazonプライム・ビデオで映画『上を向いて歩こう』(1962年、監督:舛田利雄)を鑑賞。坂本九主演の青春群像劇。日活映画。

主人公・九(坂本九)と良二(浜田光夫)たちは少年鑑別所を集団脱走する。逃亡後、九は真面目に運送会社で働く一方で、良二はドラマーの下働きとなり裏稼業の道を歩むことになる。良二の兄貴分・健(高橋英樹)は実家の兄に近づきたい思いから大学を受験することを決意し、九の運送会社社長の娘・紀子(吉永小百合)はそのことを知る。やがて良二の憧れのドラムセットをめぐり、登場人物の間で争いが起こり一触即発の事態となるが……。


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タイトルから明るい青春映画かと思いきや、暴力や麻薬などの犯罪絡みの殺伐した雰囲気だった。冒頭、集団で鑑別所から脱走するが、その後、お咎めもなく働き始めるのはご都合主義にしてもあまりにもひどい。

ラストの一触即発の場面でどう落とし前をつけるのかを思ったら、吉永小百合がポエムのような台詞を叫び、それが時空を越えてみんなに届いて一件落着。ついには、みんなで手とつないで「上を向いて歩こう」を歌いながら、(駒場オリンピック公園だろうか)並んで歩いて終幕。この終わり方は画期的というか反則だろうと思うが、吉永小百合でなければ成立しない大技ではある。まあ深く考えてはいけないのだろう。

群像劇のなかでは、脚が不自由な紀子の妹(渡辺トモコ)を九ちゃんが励ましながらリハビリするシーンはなかなかいい。あるが日活の青春映画らしいエピソードだった。

東京五輪を前にして、日本の経済成長を賛美するような大仰な映画になってしまっている。もう少しエピソードを整理して、九ちゃんと全面に打ち出して小さくまとめてほしかった。それでも、坂本九吉永小百合高橋英樹らの若い頃の姿を楽しめるのは貴重。