退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

コミック「拳児」を読んでみた

原作:松田隆智、作画:藤原芳秀によるコミック「拳児」(全21巻)を読み終わった。マンガ雑誌週刊少年サンデー」(小学館)に、1988年から1922年にわたり連載された。少年サンデーコミックスで全21巻だが、最終巻は外伝なので実質全20巻。主人公の成長を軸にした中国武術にフォーカスした格闘漫画。

父母と東京で暮らす主人公・剛拳児は、わんぱくな小学生。祖父・侠太郎から八極拳を学ぶなか、正義感と義侠心にあふれる少年に育っていく。ある日、侠太郎は日中戦争の時代の恩人を訪ねるため、単身中国本土に渡るが、そのまま消息を断ってしまう。

高校生となった拳児は、祖父の言葉に従い日々修練に励むなか自分も知らないうちに才気あふれる拳士として成長していた。横浜中華街の中華料理店オーナー張仁忠と出会い、本格的に八極拳の修行を始めるが、不良グループとのトラブルに巻き込まる、これが抗争事件に発展し、高校から無期停学処分を受ける。これをきっかけに、いまだ行方不明の侠太郎を探すために、台湾そして香港を経由して中国本土に向かい単身旅立つが……。

よくあるファンタジーとしての格闘漫画ではなく、作者の中国武術の深い造詣により創作されたフィクションであり読み応えがある。劇中にさまざまな中国武術が登場し、その奥深さに引き込まれる。そして何より、主人公の少年の成長譚としてきちんと成立しているところが素晴らしい。

ただし、ちょっとうがった見方をすれば、主人公が常に前向きで実直なところが物足りない。優等生キャラすぎるのだ。もっと少年らしい弱さを見せてもいいだろう。そしてストーリー上しかたないが、ヒロイン不在なのもさみしい。