退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『乱れる』(1964) / 名匠・成瀬巳喜男監督による晩年の傑作

DVDで映画『乱れる』(1964年、監督:成瀬巳喜男)を鑑賞。主演は高峰秀子。相手役は加山雄三。白黒映画。

スーパーの進出により寂れつつある商店街の酒屋。長男である夫に先立たれ、嫁ぎ先の店を一人で切り盛りして店を大きくしてきた未亡人・礼子(高峰秀子)は、年下の義理の弟・幸司(加山雄三)に告白されて困惑する。やがて居場所を失った礼子は家を出ていくが……。


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私の記憶が確かならば礼子と幸司と11歳ちがいという設定で、もちろん女性の方が年上。いまなら別に礼子が求愛を受け容れても少しもおかしくないが、当時の倫理観だとやはりちょっとマズいというということだろうか。

徹頭徹尾メロドラマ。とくに二人の列車での長いシーンが素晴らしい。名優・高峰秀子の面目躍如というところ。バタ臭くガッチリした体躯の加山雄三との取り合わせもよい。昨年の紅白歌合戦でコンサートを引退を宣言した加山雄三がこうした映画に出演していたのはあまり知られていないのではないか。

そしてラストの突き放しぶりは強烈。この時期はアール・ヌーヴォーの影響であろうか、日本映画でもこうして突き放したラストの映画が多数撮られてが、本作のラストは強く印象に残る。

女性映画の名手として知られた成瀬監督は、高峰秀子を組んでいくつかも名作を遺しているが、本作もそのなかの一作である。