新文芸坐の〈『未完。』刊行記念 第二回 仲代達矢映画祭〉で、映画『白い犬とワルツを』(2002年、監督:月野木隆)を鑑賞。テリー・ケイの小説(原題:To Dance with the White Dog)が原作。
長年連れ添った妻(藤村志保)を亡くし、一人残された樹木医の夫(仲代達矢)。娘たち(南果歩、若村麻由美)の心配をよそに、夫は妻との生前の約束を果たそうとする。葬儀の後に突然あらわれた白い犬とともに行動を開始する。
仲代達矢のいぶし銀のような演技が存分に発揮されていて、仲代の映画祭にふさわしい作品。共演者たちの演技も文句なし。まじめに作られた映画で好感がもてる。白い犬が後ろ足で立って仲代と踊るシーンは、やりすぎではと思わなくもないがタイトル回収としてやらなければならないのか。
舞台の田舎の描写が都会の人の視点ではないかと思われる点が気になるが、まあ実際もそういうものかもしれない。美術はなるほどこういう田舎はあるかもと思わせる。とくにボディーが錆びた古いトラックはいい味が出ている。
気になる点といえば、在日問題に言及している点。ストーリーとは関係ないし唐突な気がした。しかも中途半端で回収されない。脚本の森崎東には何か意図があったのか聞いてみたい。
しかし、この映画のテーマとも言うべき死後の埋葬場所にこだわる心境はどうも理解できない。死後の魂が遺骨にともにあるという考え方がもとになっているようだ。もう少し歳を重ねれば心境に変化があるだろうか。