新文芸坐の〈『未完。』刊行記念 第二回 仲代達矢映画祭〉で、映画『豪姫』(1992年、監督:勅使河原宏)を鑑賞した。タイトルロールを演じるのは宮沢りえだが、仲代達矢が扮する古田織部が実質的な主役だろうか。それにしても誰がストーリーの軸なのかよくわからない。なお、本作が勅使河原監督の遺作となった。
豪姫(宮沢りえ)は前田利家の娘で豊臣秀吉の養女。秀吉に自刃させられた千利休の高弟の古田織部(仲代達矢)を慕っており、織部も豪姫をかわいがっている。ある日、利休の生首が京に晒される。その首を豪姫が庭番のウス(永澤俊矢)とともに奪うところから話が始まる。当時、宮沢りえが演じる豪姫の娘時代の奇抜なヘアスタイルが話題になった。
その後、時代は徳川の治世まで一気に飛ぶ。豪姫の夫である宇喜多秀家は息子2人とともに八丈島に流罪になり、その後も他家に嫁ぐことなく豪姫は前田家に戻されている。映画でも夫に仕送りするシーンが描かれている。この頃の豪姫の老けメイクはDVDのジャケットになっていて、宮沢りえも演技で頑張っているがまだまだ青臭い。最後に勅使河原監督の薫陶を得たことを宝にすべきか。
本作は武満徹の音楽が効果的であり、茶器や衣装などの美術も素晴らしく、アーティスティックな仕上がりになっている一方で、ストーリーは散漫で落ち着かない。庭番のウス役がアクティブでなかなかオイシイのだが、映画全体を挽回するには至らず。
見どころは、ウスが負傷したときに娘時代の豪姫が胸に巻いたさらしを解いて手当てする場面。ちょっとドキドキします。そして、やはり全編を通した美術の見事さであろう。歴史ファンとりえちゃんファンは見ておいて損はない。
余談だが、こうした時代モノを見ると、和央ようかの主演映画『茶々 天涯の貴妃』(1997)も一度は見ておかなければならないと思うのだが、スクリーンで鑑賞する機会は果たして来るだろうか。