6月23日、英国のEU離脱の是非を問う国民投票が行われる。国論を二分して離脱派と残留派それぞれの運動が佳境に入っていた時期にショッキングなニュースが飛び込んできた。
16日、労働党に所属するEU残留派の女性下院議員、ジョー・コックスが極右の国粋主義者と伝えられる男に殺害されたという政治テロのニュースである。犯人は「ブリテン・ファースト」と叫んでいたらしいが、離脱派にとってはこの事件はむしろ逆風になるではないか。
両陣営とも即座に運動を一時的に取りやめたのはさすがというべきだろが、その間にも彼女を追悼する報道は続いていた。これが国民投票の結果にどう影響するのか注目される。
一方、日本ではこうした政治テロをリアルタイムで体験したことは記憶にない。すべて日本史のなかでの話である。最も新しいと思うのは、「浅沼稲次郎暗殺事件」(1960年)であろうか。
しかし昔から日本で政治テロがなかったわけではない。『日本暗殺秘録』(1969年、監督:中島貞夫)という東映映画があるが、そのなかで幕末、明治、大正、昭和の百年に起こった数々の暗殺事件をオムニバス形式で再現している。ざっとリストアップしてみる。
- 桜田門外の変 (1860年)
- 大久保利通暗殺事件 (紀尾井坂の変)(1878年)
- 大隈重信襲撃事件 (1889年)
- 星亨暗殺事件 (1901年)
- 安田善次郎暗殺事件 (1921年)
- ギロチン社事件 (1924年)
- 血盟団事件 (1932年)
- 永田暗殺事件(相沢事件) (1935年)
- 二・二六事件 (1936年)
このように以前は日本でもバンバンと政治テロが起こっていたことがわかる。最近こうした事件が起こらないのは、日本人が成熟したのか、それとも腑抜けになったのか、はたまたまったく政治に期待していないのか定かではないが、悪いことではない。
もっとも日本人も本当に食えなくなったら暴発する輩も出てくるだろう。それまでは日本はとりあえず安心なのかもしれない。英国で起こった凄惨な事件のニュースを見てそんなことを思った。