退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

「安倍晋三暗殺事件」で思ったこと

7月8日、奈良県で元総理大臣の安倍晋三氏が背後から銃撃され暗殺された。テロは許されないのは当然であるが、いろいろ考えさせることはある。


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歴史を振り返っても要人暗殺事件はめずらしくない。私は、この事件を聞いて原敬の暗殺事件を最初に思い出したが、戦前に日本ではこうした要人暗殺事件は数多くあった。軍事クーデターではあるが二・二六事件も含まれる。

今回の暗殺事件により、政治家・安倍晋三は伝説になり歴史に名を残すことになるのはまちがいない。もともと日本での歴代最長宰相で長期政権を実現したり、アベノミクスに代表される特徴的な経済政策を行ったりして“仕事”をした政治家であるが、今回の暗殺事件の悲劇性により一層印象が強くなった。

彼の政治家としての評価は後世の歴史家に譲ることになる。功罪相半ばするだろうが、私は、凋落する日本の転換期の政治リーダーとして落第点をもらっても驚かない。存命中は出てこなかった事実が今後吹き出すだろう。そうした意味では、日本の政治のどこがダメだったのか早期に解明されることが期待できる。日本政治を立て直す好機になるかもしれない。

安倍晋三秘録

一方、実行犯は41歳の元・海上自衛隊員だということしか伝わってこない。政治的背景があるかは今後解明されていくことだろう。手製の銃を用意したことや、犯行時の実行力などを考えると、それなりに優秀な男だったにちがいない。また散弾を使ったのに巻き添えを出さなかったのは、単に偶然かもしれないが計算されたことだったとしたら、彼なりの美学や矜持があったのだろう。彼の名前も暗殺者として歴史に残るだろう。

テロが許されないというのは簡単だが、歴史をみても一定数のテロリストは排除できないのは自明。それを含めて統治を考えるべきだ。また「民主主義への挑戦だ」という声もあったが、いまの日本に民主主義が本当に機能しているのかについてもよく考えてみる必要はある。

しかし、だからと言って要人暗殺が許されるわけでもないことは最後に強調しておきたい。

ここから余談。昔の東映映画に要人暗殺を扱った『日本暗殺秘録』(1969年、中島貞夫)がある。幕末、明治、大正、昭和の百年に起こった数々の暗殺事件をオムニバス形式で再現した映画だが、日本にも要人暗殺の歴史があったというがわかる。公開当時の安保闘争などで世間が騒然としている世相を反映している。このタイミングで見直すと考えさせられることがあるだろう。