財務省が「森友文書の改ざん」を認める報告書を国会に提出した。これを聞いたときどこかの外国のニュースかと一瞬耳を疑ったが、もちろん日本で現在進行中の事件である。
行政文書を改ざんして国会に提出していたという前代未聞のスキャンダルになった。およそ1年間にわたりくすぶり続けてきた、森友学園への国有地売却に関する疑惑だが、国会では改ざんされた資料を基に審議していたことになる。これはひどい。
これは行政が国会を欺いていたばかりでなく、国会での審議内容を見て投票行動を決めていた有権者をも騙し続けてきたことになる。昨年10月に行われて自公が大勝した衆議院選挙の結果もこの「改ざん」により影響を受けたことは否定できない。民主主義の危機とすら言える。
いちばん不思議なのは、なぜ財務省官僚が森友文書を改ざんする必要があったのかということである。いくら忖度したと言っても、自らが刑事責任を追求されかねない犯罪行為に手を染めるだけの動機が見いだせない。このあたりの究明は司直の手にゆだねなければならないだろう。とにかく改ざんに関与した官僚・政治家はすべて刑務所に行かなければならない。
ここまで事態が悪化すると、もはや安倍内閣総辞職は避けられないだろう。もっとも安倍首相はヤケになって解散権を行使するかもしれない。いっそのこと選挙をやり直したほうがいいだろう。それほど安倍内閣の信頼は失墜した。
疑獄と呼ばれる事件は戦前・戦後を通してたくさんあるが、今回の事件がユニークなのは首相夫人の存在が突出していることである。日本ではほとんど見られないが、歴史を紐解けば奸婦により滅亡した国も珍しくない。今回はそれに類する事件に思える。
毀誉褒貶はあるものの外交・経済については一定の成果を挙げてきた安倍政権が、安倍昭恵夫人の軽率な行動によって崩壊するのは惜しい気がするが、ここまでくると失脚は避けられないだろう。
後世の歴史家は「長期政権のなかで数々の実績を残すものの、妻に足をすくわれて失脚した哀れな世襲政治家・安倍晋三」と記録するにちがいない。