外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案が、27日夜の衆院本会議で、自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数により可決され、その翌日参院での審議が始まった。年内の改正案成立はまちがいない。
同法改正案は、単純労働を含む分野で外国人労働者を受け入れるため、在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」を新設するのが主な内容である。単純労働分野で外国人労働者を正式に受け入れるという、今後の日本の形を大きく変える重要な法案である。
しかし、予想されていたことだが、日本の岐路ともいえる重大な政策変更であるにもかかわらず、安倍政権は十分な審議をすることなしに強行採決におよんだ。あくまでも2019年4月1日施行を目指すという、スケジュールありきの国会運営だ。もっとも今回のような国会での強行採決の映像を何度も見せらると、ある意味、感覚麻痺に陥っているな思わされるところが我ながら怖い。
日本が少子高齢化が叫ばれて久しい。分野によっては「人手不足」なのは事実かもしれない。しかし将来の日本をどうするのについて国民のコンセンサスがないまま、外国人労働者の受け入れを拙速に拡大することは、きっと将来に禍根を残す。外国人労働者を無節操に受け入れるのではなく、「人手不足」をきっかけに日本のあり方を変えることを考えてもよかったのだろう。少子化による人口減少はずいぶん前から予想されてきたことであり、十分に時間があったはずだ。
また安倍政権は「これは移民ではない」と強弁しているが、これは事実上の移民政策の変更であることは明らかである。在留資格を失った外国人労働者がそのままおとなしく帰国するとは限らない。しかも「特定技能2号」に至っては家族の帯同を認めるという。教育や社会保障がどうするのだろう。まったくの無策である。
今回の法案は大枠だけ決めて、あとは運用で決める「白紙委任」になっているのも懸念材料だ。私がいちばん知りたいのは、「どの分野にどのくらいの規模の外国人労働者が入ってくるのだろう」ということだが、受け入れ上限を含めて行政が省令などで運用していくという。
過去、安倍政権は重大な政局だからといい、国会で不信任決議されたわけでもないのに勝手に衆議院を解散し、自分の都合いいタイミングで総選挙に持ち込んだ「前科」がある。今回もそれに倣って、総選挙で国民の意志を問うべきであろう。それぐらいの重大事である。まあ自分が不利な局面では選挙なんてやらないのだろうが……。
後世の歴史家が日本史を振り返って、この移民政策の変更が日本の転換点だったということだろう。これが日本衰退の契機にならないことを祈るばかりである。もう半世紀ぐらい繁栄を維持してもらないと私が困るのだ。