数年前からコンビニで働く外国人店員が目立つようになり、どんどん増えていると感じている人も多いのではないか。彼らはどこから来て、ふだんは何をしているのかという疑問に答えてくれる一冊。
- 作者: 芹澤健介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/05/16
- メディア: 新書
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キャッチーな題名の本だが、丹念な取材に基づくルポルタージュで読み応えがある。一言に”コンビニ外国人”といっても多様。東大の大学院に通う者から、書類上は留学生だが実態は出稼ぎに来ている者まで、さまざまな外国人が登場する。当たり前だが彼らにはそれぞれの都合や夢があることがよくわかる。
最近はベトナムやネパールからの来日する”コンビニ外国人”が多いらしい。とくにベトナムでは日本語ブームに湧いていて、”ジャパニーズ・ドリーム”を目指す若者もいるという。実際、在留外国人を対象としたビジネスで起業する事例も紹介されている。
さまざまな”コンビニ外国人”が登場するが、ちょっと面白いと思ったのは、沖縄のファミリーマートの「留学生インターンシップ」である。台湾の人は、ごちゃごちゃした東京よりも気候風土が似ている沖縄で働くことを希望し、沖縄で貴重な体験をして帰国する。沖縄は一味違う。日本で働いてもらうなら、日本に好意を持って帰国してほしいものだ。
また、この本の刊行後になるが、昨年末に改正入管法が成立し、日本は外国人労働者受け入れ拡大に大きく舵を切った。詳細は省令などで決めることになっているため、今後、”コンビニ外国人”がどのような資格で就労するのか現時点ではわからない。しかし大きな転機であることはまちがいない。
すでにコンビニ店員だけでなく、コンビニの商品も外国人労働者なしでは消費者に届かない。もはや彼らなしでは日本経済は回らないと言っても過言ではない。安倍政権は、改正入管法は移民受け入れるものではない、と強弁していたが、いずれにせよ彼らとうまく付き合っていくほかはないのが実情だ。そうした取り組みを紹介しながら将来を展望している最終章は、とくに興味深く読んだ。
なかに「外国人労働者の問題が解決するのは、日本が外国から見捨てられるとき」だというアイロニカルな見立てが出てくるが、なるほどと思った。いつまでも外国人が喜んで日本に働きに来てくれるとは限らない。東京五輪後に予想される経済の落ち込みで、外国人から「はい、さようなら」と言われないようにしなくてはいけない。そのために、いまからでもいろいろ準備しておくことがあるだろう。