新文芸坐の《気になる日本映画達〈アイツラ〉2018》で映画『沖縄スパイ戦史』(2018年、監督: 三上智恵、大矢英代)を鑑賞。沖縄戦におけるゲリラ戦やスパイ戦で引込された惨劇をふたりのジャーナリストが追ったドキュメンタリー映画。
沖縄戦における悲劇といった題材は既に掘り尽くされたかと思っていたが、知らなかったことが多く、自分が不勉強だったことを思い知った。
主なポイントは以下のとおり。
とくに「戦争マラリア」で多数の犠牲者を出した経緯を、証言や資料などから明らかにしていく過程はドキュメンタリー映画の真骨頂といえるくらいにすばらしい。ほとんど知らなかった出来事だったこともあり衝撃的だった。
旧日本軍は国民を守るための軍隊ではなく、国体護持が最優先だったのはよく知られているが、ここまで非情になれるもののかとあらためて驚かされる。これは沖縄だからやれたのか、もし本土決戦があれば同じことが起きたのだろうか。
それにしても作戦の道義的責任は別にしても陸軍中野学校出身者はとても優秀だったことがよくわかる。42人が沖縄各地に散って、少年兵を組織するなど多大の戦果を挙げている。いまの自衛隊にも、このような訓練を受けてゲリラ戦を戦える人材が育成されているのだろうか、興味のあるところである。
そんなことを考えて見ていると、急に沖縄戦の時代から、沖縄の島嶼部への自衛隊配備など現代に話題が移って唐突な印象を受けた。旧軍と自衛隊は根本的に違うと思いたいが、軍隊組織というものはしょせん権力者を守るためにある、というのは核心を突いているようにも思える。さいわい敗戦以来、日本は自衛隊の本性が明らかになるような事態を経験することなく現代に至っている。軍隊の本質とは何だろうと考えさせられる。
こうしたドキュメンタリー映画を見ると条件反射でポレポレ東中野を思い出す。小さな箱で上映されることはあっても、地上波で放送されることはない作品だ。この映画で紹介されている沖縄戦の悲劇が広く知られるようになれば、本土の人たちの沖縄の見方も変わるだろう。多くの人に見てほしいドキュメンタリー映画である。