退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『夜間もやってる保育園』(2017) / 夜間保育園の知られざる現実を描いたドキュメンタリー映画

ポレポレ東中野で映画『夜間もやってる保育園』(2017年、監督:大宮浩一)を見てきた。夜間保育園の知られざる現実を描いたドキュメンタリー映画

昨年「保育園落ちた日本死ね」というブログ記事が注目を集めたが、待機児童がいま大きな社会問題となっている。そうしたなか多様な働き方や家庭の諸事情に対応すべく、認可夜間保育園が運営されている。しかし、その数は全国でわずか80か所ほどだという。これだけ夜間に働いている人が多い社会においてあまりにも数が少ない。

このドキュメンタリーでは、新宿区の24時間保育園「エイビイシイ保育園」を中心に、全国各地の保育現場を取材して、夜間保育園に子ども預けることを選択した親たちの実情、そして保育園が抱える問題点を通じて、観客に社会のあり方をを考えさせる。

統計資料からはうかがい知れない夜間保育の実態が浮き彫りにされる。普段見ることができない現実を見ることができるのはドキュメンタリーの醍醐味。その点では大変興味深い映像が見れた。

当初ダブルワークをしないと生計が立たないワーキングプア層が夜間保育園に利用者かと思って見ていたが、中央省庁に勤務している女性が利用していたので驚いた。英国で研修を受けたとのことなのでかなりのエリートだろう。彼女が「イギリスでは午後5時からは家族の時間とされている」とコメントしていたのが印象に残る。働き方が日本とは根本的にちがうようだ。

いまの日本は夜間まで店が開いているなど消費者にとっては便利だが、一方夜間まで家族と離れて働いている多くの人がいることは忘れてはいけない。日本は本当にこれでいいのかと思ってしまう。最近「働き方改革」という語が耳目を集めているが、そろそろ真剣に考えた方がいいのかもしれない。

映画の終盤で、かつて夜間保育園で育った女子(中学生ぐらいか)が保育園を訪問して、屋内をしげしげとみてまわる姿が印象に残った。何を思っているのか彼女は語らないが、保育士を目指すのだろうか。ちょっといいシーンである。

ラストは乳児の寝顔のアップだった。全編通して子どもたちがかわいらしく撮れているのは見事だが、こうした映像は有無を言わさないところがあり、だれも文句のつけようがないので、ちょっとずるい気もする。いろいろ考えさせるドキュメンタリーであり、問題提起としては満点に近い。

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