都市部で待機児童が社会問題になって久しいが、この本は「もし保育園が義務教育になったら…」というユニークな視点で少子化のみならず社会のレベル向上の可能性を探っている。
- 作者: 古市憲寿
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/07/01
- メディア: 単行本
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一見、荒唐無稽に思える「保育園義務教育化」であるが、就学前教育は投資対効果が最も高いことをエビデンスを基に示すとともに、母親が人間扱いされていない日本の現状を痛烈に批判している。この本を読んで溜飲を下げた母親たちも多いだろう。
さらに少子化が日本社会にもたらす深刻な影響を読み解きながら、子育て社会しやい環境を整備することは経済にとっても有益であるという。
なるほど、いいことずくめじゃないかと思ったが、「保育園義務教育化」を実現するにはどのくらいのコストが必要なのかにまったく触れていないのは不満。
これだけ大きな改革となれば財政的コストだけではなく、さまざまな社会的影響が予想される。負の側面もあるのではないか。本書で唱える方向性は正しいように思えるが、いまひとつ具体的な政策に結びつかないのは惜しい。
また、いままで待機児童問題が解決できないのは、こうした政策が票に結びつかないからだとする政治家の言葉が紹介されていたが、本当にそれだけなのだろうか。他にも理由がありそうな気もする。まずはそのあたりから分析する必要があるのではないか。
それでも当事者ではない古市さんがこのような問題に関心を持ち、的確に現状を捉えていたことに驚いた。正直、表紙を見たとき「きもっ」と思ったが、通読してすっかり見なおした。