退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ラストゲーム 最後の早慶戦』(2008) / 戦時下の青春の輝きを描く感動作

新文芸坐の《戦後70年企画 第二部 映画を通して検証する 日本の戦争/今こそ、反戦平和の誓いをこめて》という企画で、映画『ラストゲーム 最後の早慶戦』(2008年、監督:神山征二郎)を鑑賞。

戦時下、適性スポーツと見做された野球は当局から目のかたきにされ東京六大学野球も活動を停止していた。それでも練習を続ける早大野球部。戦局が厳しくなり、ついに学生の徴兵猶予が停止され部員も戦地に向かうことになる。「学徒出陣の前にせめて最後の早慶戦を」と願う部員たちの青春群像を描く。

まず史実どおりりなのかわからないが、早慶戦をやろうと慶應義塾塾長(石坂浩二)が訪ねる相手が早大野球部顧問(柄本明)なのが気になった。カウンターパートとして吊り合わないのではないか。そして肝心の野球の試合がうまく撮れてないのも残念。

各部員たちを十分描き分けられていないだけでなく、その後の消息が最後までよく分からないことも消化不良に思えた。テロップで主人公の戸田(渡辺大)が戦死したことが告げれるだけで、他の部員はどうなったのか判然としない。

とくに部員たちの思いを一身に集めた、食堂で働いていたトモ子(原田佳奈)は、戦後、部員の誰かと結ばれたのだろうだろうか、ということが気になって仕方ない。

当事者にすれば野球に対する思いは真剣だったのだろう。しかし軍部は「この非常時に玉遊びなんてしやがって」と苦々しく思っていたことが映画で描かれる。正直言うと映画の観客のひとりとしても、一般国民が次々に出征していくなか「おまいら野球やってる場合なの?」と思えて、どうもピンとこない映画だった。早慶関係者には特別に響くものがあるのだろうか。

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