退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

河本敏浩『名ばかり大学生』

名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 (光文社新書)

名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉 (光文社新書)

「名ばかり大学生」といっても大学生学力低下だけを問題とする学力論ではなく、様々な統計データの分析から教育問題を分析し、問題は大学入試および大学教育にあると主張する。

少子化にもかかわらず新設大学が増え入学定員が増えていて、従来進学できなかった学力の学生が経済力さえあれば大学生になることができる。まさに「名ばかり大学生」である。この本では、「21世紀の大学生は、70年代の暴走族レベル?」とまで言っているが、おそらく当たっているのだろう。

そうなると高等教育の定員を絞ればいいだろうと思うのだが、そう簡単ではないらしい。高校の進学者数を絞ると中学が荒れたという愛知県の実例が既にあり、なかなか興味深い。まあ近くの底辺校の奴らを見ると、別に少しぐらい荒れてもいいから税金使うなよ、とも思うが。
また大学教育の中身が重要なのは確かだろうが、実業界を始めとする社会との接続についてほとんど言及していないのは残念だった。就職予備校と揶揄される今日の大学教育は、就職を抜きにしては語れないと思われる。

最後に、本書では義務教育修了の資格試験というアイディアを挙げている。高校を義務教育にして、高校在学中に中学2年程度の試験をやればいいと言っているが甘すぎないか。普通に中学卒業認定を厳しくして、合格できない生徒は留年させるだけでも随分ちがうはずだ。そうすれば、九九ができなかったり、アルファベットを書けない高校生はすぐに駆逐できるだろう。