退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】藤沢数希『コスパで考える学歴攻略法』(新潮新書、2022年)

主に受験を控える子どもを持つ親に向けた本。

教育に「コスパ」という考え方を持ち込むのに抵抗がある人もいるだろうが、子どもの教育をどうしようかと、それを考えざる得ないのは現実である。筆者のプロフィールはややぼんやりしているものの、最新の情報に基づいて「子どもの学歴」に対して、さまざまな視座を提示していて読み物として面白く読める。

とくに面白いのは中学受験に対する考え方である。章の見出しが、なんと「中学受験はダービースタリオンだ」である。中学受験をダビスタだと看破しているところは慧眼である。読み進めていくとなるほどと唸らされた。まともな中高一貫校があるかどうかは地域差も大きいが、まあ都市部に住んでいて、カネがあれば中高一貫校を選ぶだのは必然だろう。

中学受験の章で懐かしかったのは、中学受験算数である。鶴亀算などの「〇〇算」とかいう謎の手法を学んだ経験を持つ人も多いだろうが、本書での言及に懐かしく感じた。方程式を用いても中学受験算数が楽に解けるわけでもないことを知らない人は多いと思う。しかし、苦労して身につけた中学受験算数は、その後、少なくとも直接的にはまったく役にたたない。これまでの算数は何だったのかと思うのである。無駄すぎる。

加えて中高一貫校に対して、格安の公立中学から高校受験ルートについても言及している。それなりの進学校に進学すれば、中高一貫校との差は少ないという。まあ駿台模試を受けるトップ進学校の生徒と比べてもフェアじゃないとも思うが、意外に「高校受験ルート」も悪くないようようだ。地方民にも希望がまったくないわけではない。

また、本書では終始「日本の大学は悪くない」と説いていている。確かに上位国立大学レベルの理系教育を格安で享受できるのは、海外にくれべても悪くないかもしれない。これからは学部までは日本のまともな大学で過ごして、海外の大学院に進学するルートが一般的になるかもしれない、と個人的には思った。