受験生でもなく受験生の子どもがいるわけでもないがが、知人から面白いと薦められたので読んでみた。受験生の疑問に対して、天才と超努力家がそれぞれに意見を述べたあとに著者がコメントするという形式。
- 作者:笠見 未央
- 発売日: 2016/03/18
- メディア: 単行本
世の中の受験体験記には、天才の自慢話や底辺校から大学受験に成功するような極端な本が多い。後者はドラマチックなので映像化されたりもしている。
そうした本は「天才」でも「超努力家の」でもない多くの受験生にとってあまり参考にならないだろうが、この本では両者の意見を紹介しながら筆者の唱える勉強法が述べられているので、より広い視野で考えることができるのは美点。
最新の参考書の動向はあまり興味がないので措いておくとして、ちょっと面白いと思った内容を2つ紹介してみたい。
ひとつは「現代文は高校から逆転可能か?」。つまり「幼少期の読書体験で逃げ切りか、積み重ねで逆転可能か」というのが争点だ。結論は「現代文は幼少期の読書体験が大きい。逆転するなら、活字だけの環境を作れ」というもの。テレビとマンガとネットとスマホを遠ざける環境が国語力を伸ばす、とあった。
これは無理ゲー。それほど幼少期からの読書体験が支配的だということだろうか。どんな読書体験が受験に向いているだろうか興味のあるところ。
もうひとつは「物理に才能は必要か?」。結論は「物理の授業・参考書の質は向上しているが、物理には相性がある。無理して選択するのは避けよう」だった。この本によれば物理の暗記量は少なく、化学の半分、生物の4分の一ぐらいであろうか、とあった。しかし物理はルールさえ覚えて運用できれば、センターで満点が狙えるらしい。なるほど。
これが気になったのは、ちょうどネットで次のような質問を目にしたからだ。「高校で物理を履修しないで工学部の機電系に進学しても大丈夫ですか?」というもの。質問者は化学受験で臨むらしい。上の論に倣えば「相性」があるから進学後のリスク高いよね、と思った次第。
通読後、いまはネット授業が普及するなど環境は進歩しているが、本質は昔とあまり変わってないなあと感じた。この本では勉強法に指針を示しているが、受験生はそれぞれちがうし万能の勉強法などあるはずもない。そういう意味では生徒の個性を把握しつつ、個々の受験生に適した勉強法を提示できる経験豊富なメンターのような職業は今後も健在なのだろう。