上野の国立西洋美術館で開催中の「クラーナハ展」を見てきました。かなり前にチケットを入手していましたが、ずるずると年明けになってしまいました。いつものように気が付くと会期終了間近です。
ルカス・クラーナハ(父、Lucas Cranach der Ältere, 1472-1553年)はドイツ・ルネサンスを代表する芸術家で、代々のザクセン選帝侯の御用絵師として仕えました。大規模な工房を開き多数の絵画を残してており、生前に大成した作家として知られています。ドイツ読みで「クラナッハ」で親しんでいる人もいるでしょう。
ユディトやヴィーナスなどの物語に登場するヒロインたちを蠱惑的なタッチで描く裸体像は独自のエロティシズムを放っていて魅力的です。この画風は現代日本のサブカルチャーとも通底するところがあるように思えました。
それならば日本でもっと人気があってもよさそうですが知名度はイマイチ。昨年は日伊国交樹立150年記念だったせいでイタリア関連の展示会がいくつか開催され、巨匠たちの作品に触れる機会がありましたが、やはりイタリア・ルネサンスの作品に比べると華がありません。ドイツだから仕方ないのかもしれませんが歴然とした差を感じます。
今回の展示のなかでは、《ホロフェルネスの首を持つユディト》が印象に残りました。ポスターやチケットにも使われている絵画ですが、それらは絵の下部にあるホロフェルネスの首の断面がカットされていますね。まあ見ていて気持ちのいいものではありませんが……。
クラーナハ《ホロフェルネスの首を持つユディト》 国立西洋美術館 クラーナハ展 ─ 500年後の誘惑
またクラーナハは同時代の宗教改革者マルティン・ルターの友人でもあり、彼とその家族の肖像画を残しています。いくつかは本展で展示されています。今回クラーナハがルターが結婚する際の証人のひとりとして名を連ねていたことを知りました。ちなみに今年は1517年に始まった宗教改革から、ちょうど500周年にあたります。この時期に回顧展を見たのも何かの巡り合わせでしょう。