退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

コミック「山賊ダイアリー」を読む

岡本健太郎によるコミック「山賊ダイアリー リアル猟師奮闘記」(全7巻)を読み終わった。

漫画家でありながら現役漁師である著者の自伝的漫画である。

岡山県の田舎に生まれた著者は、子どものころ、猟師の祖父から大きな影響を受けて育つ。物語は東京で恋人とデートしている場面から始まる。筆者は、そこで猟師になる夢を語るが、恋人には「動物を殺すなんて野蛮」と一蹴されて振られてしまう。その足で故郷にUターンして猟師になる。

そこから「猟師日記」が始まるわけだが、ここは本当に日本なのかと思うほど浮世離れした体験記が面白い。狩猟者登録証を取得したり、空気銃「エースハンター」を購入するあたりは、未知の領域で興味深く読んだ。

準備が整い、いよいよ猟に出るわけだが、新米猟師としての筆者の視点から語られるさまざまな体験談は魅力的である。とくに獲物を解体して、ジビエ料理として食べるところがいい。グルメ漫画に出てくる料理は味がわからない場合も多いが、本作のジビエもまったく味を想像できない。ちょっと食べてみたいモノもあるし、正直遠慮したいモノもある。

また猟師仲間との交流もなかなか興味深い。師匠とも言えるベテランから同じぐらいの歳の仲間など、ほどよいコミュニティが形成されているのが伝わってくる。まあ実際は田舎の人間関係はいろいろ大変なのだろうが……。

筆者は狩猟により冷蔵庫に入りきらないほどの肉を確保する様子が描かれて、なかなか豊かな生活を送っていることがうかがえる。日本にもそうした場所があるんだなとあらためて認識した。一方でベテラン猟師の引退など、過疎化の影響により、将来にわたり地域コミュニティを維持できるのかという懸念もあるようだ。

狩猟にちょっと興味のある程度のライトな層には面白く読めるのではないか。漫画としてもとても面白い。ただし専門的知識はまた別途入手する必要があろう。

いったい舞台はどこなのだろうと思って読んでいたが、真偽の程はわからないが、岡山県津島市近辺だという情報があった。地図を見て「あーあ、なるほど…」と思ったものだ。

山賊ダイアリー コミック 1-7巻セット (イブニングKC)