半藤一利の同名ノンフィクションを、SF伝奇漫画の巨匠・星野之宣がコミカライズ版。上下巻。
これまで2度も映画化されている終戦をめぐるドラマ。1967年の岡本喜八版と2015年の原田眞人版である。どちらもよく出来ているが、どちらがオススメかと問われれば私は断然岡本版を推したい。好きな日本映画のひとつである。
書店で平積みになっている本書を見つけたとき、巨匠・星野之宣がこんな仕事するんだと意外に思ったものだ。さすがに文字が多いのは物語の性質上仕方ないのだろうが、それでも読みやすいのはベテランの手練というべきだろう。
冒頭、幕末から物語が始まるので驚いたが、宮城事件を幕末の「尊皇攘夷」思想と結び付けている点がユニーク。まあ原作どおり描いて紙芝居になってもつまらないので、このくらいはアリだろう。
そした阿南陸相もクーデター計画に深く関与していたという解釈も面白い。結局、阿南は終戦の御聖断に直に接して考えを改め、計画書を焼き捨てて自害するという描かれ方としている。
コミカライズにあたり漫画家の解釈が色濃く出ているが、これが仕事を引き受ける条件だったのかしらとも思う。
映画版を見て興味を持った人は是非読んでほしい作品である。上下2巻で結構分厚いけどね。