退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『日本のいちばん長い日』(1967) / 岡本喜八と橋本忍による群像劇の大傑作

新文芸坐で映画『日本のいちばん長い日』(1976年、監督:岡本喜八)を見てきた。何度も見た映画だが、夏になるとどうしても観たくなる作品。白黒映画。東宝映画。

《8.15終戦の日 特別企画 映画を通して、歴史や社会を考える 戦争 軍隊 原爆 冤罪…》という恒例のプログラムでの上映だったが、終戦の日にいつも上映されている気がする。

本作は半藤一利のノンフィクションの映画化。鈴木貫太郎首相(笠智衆)と閣僚たちが御前会議において日本の降伏を決定した1945年8月14日の正午から宮城事件、そして玉音放送を通じてポツダム宣言受諾を国民に知らせる8月15日正午までの24時間を描いている。この一日が「日本のいちばん長い日」というわけだ。

長いアバンタイトルのあと緊迫感が失われないままラストまで疾走するのはさすが。先日、訃報が流れた巨匠・橋本忍の脚本と、鬼才・岡本喜八の演出が冴えている。

だれが主役でも脇役でもない群像劇の教科書のような作品。東宝オールスターの俳優陣に圧倒される。脚本があっても、いまの日本映画界ではとても再現できないだろう。

娯楽映画としても一級だが、それにとどまらず閣僚たちをいたずらに英雄視せずに、戦争の悲劇性をはっきりと打ち出しているのは監督のこだわりだろう。。最後に流れる「この戦争で300万人が死んだ」という文言は重い。

当時、東宝内部でも興行的には難しいと思われており、映画をヒットさせることよりこのテーマで映画をつくることが重要だと考えられていた。しかし、いざ公開すると予想を大きく上回る興行成績をあげたという。


日本のいちばん長い日(1967年版)予告編

2015年には原田眞人監督により松竹映画として同名映画が製作されている。2つを見比べてみるのも一興だが、私は岡本喜八版が断然好きである。