シネマヴェーラ渋谷の《玉石混淆!? 秘宝発掘! 新東宝のディープな世界》で、映画『日本敗れず』(1954年、監督:阿部豊)を鑑賞。
太平洋戦争末期、日本はポツダム宣言を受諾するが、徹底抗戦を主張する青年将校がクーデターを計画する。いわゆる宮城事件を扱った日本初の作品である。どうしても後に岡本喜八監督が撮った大傑作『日本のいちばん長い日』(1967年)と比べてしまうが、この作品は市井の生活を描いているところが特徴的。
終戦から年月が経っていないためか役名は仮名が使われていてややわかりにくい。阿南陸相にあたる役を早川雪洲が演じているほか、決起する若手将校のなかに駆け出しの宇津井健、丹波哲郎、細川俊夫らの姿があるのも見どころか。
冒頭の東京空襲の被災場面では川に浮かぶ遺体が生々しく描かれている。スタッフのなかに戦争経験者が多くいたことが伺える。この時期にしかできない演出かもしれない。
ラストは戦後に生まれた子どもたちが小学校の校庭で遊んでいる場面を映し、平和を希求しつつ終わる。戦後70余年にわたり世界に戦争が絶えないなか、日本はこれまで戦争に関与せずとりあえず平和だったという事実は重い。そんなことを考えながら最後のシーンを見た。