Amazonプライム・ビデオで配信されていた映画『私は貝になりたい』(2008年、監督:福澤克雄)が、プライムから外れそうだったので、あわてて鑑賞する。
加藤哲太郎の獄中手記が原作で1958年テレビドラマで橋本忍の脚本で映像化され、1959年にフランキー堺主演で映画化されて話題となった。本作はそのリメイク作品であり、実質的に脚本家の橋本忍の映画と言える。
第二次世界大戦中に上官の命令で捕虜を刺殺した理髪店主(中居正広)が戦後C級戦犯として逮捕され、巣鴨プリズンで処刑されるまでを描く反戦映画である。
1959年版からかなり加筆されており、上映時間139分の長尺となっている。冗長とまでは言わないが、とにかく長い。まあ巨匠・橋本忍が必要だと思ったのだから、じっくり観ると評価は変わるかもしれないが、ややしつこいように感じた。
また久石譲による劇伴も過剰で押し付けがましい。とくにエンドロールで流れる三拍子の明るい楽曲はちょっと違うように思う。その曲がフェードアウトしてMr.Childrenの主題歌が流れるのもどうかと思う。日本映画にありがちのエンドロールだが、本編の余韻を大切してほしいものだ。
この映画の肝は、主演の中居正広のキャスティングだろう。若手でもっと演技の上手い役者はいただろうが、結果として中居の存在感が印象に残った。「なんでオレが?」という表情はちょっといい。また死刑囚となったあと、SMAPメンバーの草彅剛と同じ部屋になるというサプライズもある。
さらに出演者では、問題の部隊の指揮官だった元中将を演じた石坂浩二がよかった。処刑される前に堂々と米軍の戦争犯罪を指摘するあたりはさすがの貫禄である。実際、無差別爆撃により無辜の民間人を殺害した罪は問われない。勝てば官軍とうことなのか、これに納得できない日本人は多いだろう。
戦争の理不尽さを描こうという試みはわかるが、結末がわかっている物語を長尺で見せられるのはちょっとツラかった。封切り時に劇場で見たらまたちがったのかもしれない。