退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

東京医大の女子受験生差別で思ったこと

読売新聞は2日、東京医科大が合格者数の女性比率を3割程度に抑えるため2011年から試験結果を改ざんしていたと報じて話題になっている。

東京医科大の評判は、某文科官僚との贈収賄事件で地に落ちた感もあるが、この入試の得点改ざん疑惑も一連の不正疑惑の捜査から飛び火したと思われる。自業自得とはいうものの、名門・東京医科大も某文科官僚と関わったばかりに踏んだり蹴ったりである。

本件は海外メディアでも取り上げられて、日本の女性差別社会と無理やり関連付けられて報道されている。ただし今回の女子受験生の得点の改ざんは、東京医科大の男女差別意識によるものかと言えば、それほど単純ではないだろう。

www.bbc.com

おそらく医療現場には適正な男女比率というものがあって、それを維持できないと、大学の医局や系列病院などの医療現場がまわらなくなるのだろう。女性の卒業者が過酷な医療現場に進まないなどの男女の傾向のちがいは以前から指摘されている。女性比率を抑えるのは、医療現場から切実な要望であり、さらに言えば患者さんのためでもある。医療制度維持のためには止む終えない措置だったとも考えられる。

ペーパー試験だけで医学部の入学を決めると女子医大生が増えて、眼科や皮膚科ばかりが増えて困る、という声を聞いたことがある。このように男女別に診療科の偏りもあるだろうし、女医はへき地に行きたがらなかったり、育児のため当直ができないなど医療現場でいろいろ困ったことが起こる。そこで入口で男女比率を調整するということになる。

一般企業の採用でもペーパー試験の結果だけでなく、将来の組織のあり方を見据えて男女比率を調整しているのはよく知られている。医学部の場合、入試ではあるが、そのまま附属病院や系列病院への人材確保の側面もあるから、他学部とは違った事情もある。

しかしながら、こっそり女子受験生だけ入試の得点から減点するのは明らかにフェアではないし、どう言い繕っても正当化できないだろう。医療現場のニーズを満たすためには、手間はかかるだろうが一人ずつ面接をして女子受験生を切るしかないだろう。入試要項には、「記述試験と面接の結果から総合的に合否を判断する」ぐらい書いておけば、大きな問題にならなかったはずだ。もっとうまくやれと言いたい。

まあ、これが安倍晋三首相が唱える「職場への女性参加推進」に反することは間違いないが、日本社会がそうなっていないのだから仕方ない。一大学が解決できるような問題ではないだろう。

「同じことはどの大学でもやっている」という声もあるが、おそらく事実であろう。また男女性別だけでなく多浪を排除するという年齢差別があることも、よく知られている。フェミニストたちが大学周辺でデモをしたそうだが、問題はそんなに単純ではない。

東京医科大学(医学部〈医学科〉) (2018年版大学入試シリーズ)