新文芸坐の《二枚目は笑顔で殺す 草刈正雄スペシャルッ!》で、映画『あにいもうと』(1976年、監督:今井正)を鑑賞。原作は室生犀星の短編小説。3度めの映画化。東宝映画。
街の工場に住み込みで働きに出ていた妹・もん(秋吉久美子)が、妊娠して多摩川沿いの実家に帰ってくる。ごろごろと自堕落に日々を過ごす妹にに対し、兄・伊之吉(草刈正雄)は怒りを爆発させて悪態をつきまくる。かつて仲がよかったが妹の妊娠をきっかけに激しく対立する、兄妹の複雑な心情を描く。
最近の萌アニメの兄妹モノでは、ツンデレは妹と相場が決まっているが、本作では草刈正雄がツンデレの兄を演じている。最後にダンプカーに妹の乗せて駅まで送ってやるラストシーンでの"デレ"が必見。
それでも草刈正雄特集での上映だが、やはりこの映画は秋吉の映画だろう。冒頭から実家に戻り部屋でごろごろしているだけでも魅力的で、オイシイところをすべて持っていく。女優オーラが炸裂!
印象に残ったのは、はつを妊娠させた学生(下條アトム)が、はつの実家を訪ねて父親(大滝秀治)と対面するところ。父親はかつて護岸工事を仕切っていた親方で荒くれ者。子供はどうなったか訊く学生に対し、流産したと静かに伝えるシーンは緊迫感があった。その後学生は帰路につくが、途中で兄・伊之吉にボコられて、バスのなかでは末妹(池上季実子)に饅頭を食べているのを見られる。この一連の流れもよかった。
なかなかいい映画なのだが、なぜかソフト化されていない模様。機会があればぜひ一度見ることをオススメします。