DVDで映画『燃えよ剣』(1966年、監督:市村泰一)を鑑賞。土方歳三を当たり役とした栗塚旭主演の松竹映画。原作は司馬遼太郎の同名歴史小説である。白黒映画。ジャケットがカッコいい。
この原作は、原田眞人監督、岡田准一主演で54年ぶりに映画化され、2020年5月に公開予定で楽しみにしていたが、新型コロナウイルスの感染拡大のため公開が延期されている。原田版を見る前に見直しておこうと手に取ってみた。
ストーリーは、土方歳三(栗塚旭)と七里研之助(内田良平)、そしてヒロイン・佐絵(小林哲子)をめぐる内容に再構成されていて、池田屋事件までしか描かれてない。のちの函館戦争で生涯を終える土方の半生を描くには尺が短かったのだろう。DVDに収録されていた栗塚のインタビューによれば、本作が成功すれば後編が作られたかもしれないとのことだった。
新選組映画のエッセンスを抽出したと言えば聞こえはいいがやはり尺が短い。とくに芹沢鴨(戸上城太郎)があっさり暗殺されてやや物足りない。
それでも映画として大きく破綻していないのは、脚本に名を連ねている加藤泰や森崎東の手腕によるものだろうか。佐江をめぐるロマンスあり、クライマックスの池田屋事件の大掛かりなチャンバラありと意外に楽しめる。
主演の栗塚旭は、テレビドラマ「新選組血風録」(1965年)で土方歳三役の抜擢されて好評を博し、「栗塚=土方」のイメージを決定づけるハマリ役となった。このテレビドラマは実質東映制作だったが、本作は松竹の時代劇映画である。その違いを味わうのも一興だろう。ちなみに栗塚は、1970年のテレビドラマ「燃えよ剣」でも土方役を主演している。
テレビドラマ「新選組血風録」を見た限りでは、栗塚旭は殺陣が上手い印象はなかったが、本作では池田屋事件を含めてチャンバラを無難にこなしていて迫力のある映像に仕上がっている。
出演者に大御所がいないこともあり一見地味な時代劇映画であるが、いまに伝わる「新選組モノ」の原形として見ると面白いだろう。考えてみれば「暗殺集団」かつ「逆賊」だった新選組に、現代においてこれほど支持が集まるのは不思議なことだ。