安倍晋三首相は25日夕方に記者会見を開いて衆議院解散を表明した。「国難突破解散」と命名していたが、まったく意味不明。とくに北朝鮮問題で危機が迫っていることを理由に挙げているが、いま解散する必要があるのだろうか。むしろこの時期に政治的空白をつくる方が問題だろう。何もかもがわからない。
相変わらず安倍首相が言っていることはわからないが、そこはいったん措いて首相の解散権について考えてみたい。「首相がいつでも好きなときに衆議院を解散できるのか問題」である。
今回の解散は「大義がない」という指摘もあるが、政治は権力闘争の場でもあるから、権力の維持のためには何をやってもいいと思うが、本当に正当性があるのかとう疑問は払拭できない。
今回の解散は「7条解散」と呼ばれ、天皇の国事行為について規定した日本国憲法第7条に基づいている。条文を抜粋する。
よく「解散は首相の専権事項だ」と言われるが、正確には解散は内閣の助言と承認により天皇が行うのである。
条文上は解散について制約はないが、首相がいつでも好きなときに衆議院を解散していいのかという疑問が残る。国民が選挙で選んだ衆議院議員を任期を残しているのに勝手にクビしていいのだろうかということもある。
過去に解散の正当性を争う違憲訴訟があった。苫米地事件である。詳しくは述べないが、1960年に最高裁は「高度の政治性」を理由に憲法判断を避けた。いわゆる「統治行為論」である。さらに最高裁は、7条解散の合憲性は「最終的には国民の政治判断に委ねられているもの」とした。つまり解散権を濫用するような政権は選挙で倒しちゃいなよ、ということだろう。
そうであってもやはり首相の解散権については憲法になんらかの制約を設けるべきだろう。今回のように、「いま選挙したら勝てそう」「そろそろ支持率回復してきたなぁ」「モリカケ問題が面倒だなぁ」といった理由でいちいち衆議院を解散されたら国民は堪ったものではない。いい加減してほしい。