森恒二のコミック「無法島」(全6巻)を読み終わった。
本作は、以前読んだサバイバルコミック「自殺島」の前日譚にあたる。しかし描かれたのは「自殺島」のあと。漫画雑誌『ヤングアニマル』に2019年から2022年にかけて連載された。
(あらすじ)近未来の日本、政府は増え続ける凶悪犯を対象に、試験的に流刑制度を復活させる。死刑相当の凶悪犯たちは、通称「無法島」なる無人島に送られるが……。
前作「自殺島」が気に入ったので、続編である本作も読んでみた。後に描かれたこともあり、作画がより洗練されている。尺が短いこともあり、登場人物が限定されていてストーリーが整理されていて破綻がない。とりわけ主要な登場人物が「無法島」に送られる経緯が丁寧に描かれているプロットがよい。
前作同様、サバイバルの知識がふんだんに盛り込まれている。ストーリーは荒唐無稽であるが、サバイバルに関してはリアリティが感じられるのは美点だろう。
主人公は元野球のピッチャーで投石を武器にし、ヒロインは木刀を剣道使いという設定が秀逸。剣道の有段者とは言え、女性が木刀でどこまでならず者相手に通用するのかと思ったが、ちゃんと体格差や長物に対しては苦戦したり、複数の相手には不利になる様子が描かれており、アクションシーンは読みごたえがある。
読後、実写化したらいいのにとも思ったが、さすがに残酷シーンが多すぎて難しいか。とくにクライマックスとも言える「全裸で戦う女剣士」は無理だろう。見てみたいけど……。
二人で島から旅立つというラストは、陳腐でもあるがストーリーとして王道であり、読後感は爽やかである。