退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

コミック「笑う大天使」を読んでみた

少し前に川原泉の中編コミック「笑う大天使(ミカエル)」を十数年ぶりに読み直しました。1987年に雑誌『花とゆめ』に連載されたコメディ少女漫画です。

今回読んだのは文庫版(全2巻)。本編は第2巻の途中までと意外に短い。こんなに短かったかなぁ。本編のほかに、それぞれの主人公のエピソードを描いた短編3編が収録されています。その後、後日譚というべき「特別編」が描かれていますが、この文庫版には収録されていませんでした。残念。

主人公は、名門お嬢様学校「聖ミカエル学園」に通う女子高生、司城史緒、斉木和音、更科柚子の3人。それぞれ猫をかぶり、お嬢様として学園生活を送っていたが、ある事件をきっかけに互いの本性がばれてしまうが、それをきっかけに3人は仲のよい友人となる。この3人が偶然手に入れた怪力を使って、世間を騒がせていた名門女子高校生連続誘拐事件を解決する。

まあそんな学園モノのコメディ少女漫画です。「まっこと」「むぎゅむぎゅ」「うんにゃ」などセリフの端々に往時の少女漫画の雰囲気を感じることができます。私には懐かしいですが、若い人がいま読むと奇異に感じるかもしれません。どうなんでしょうか。

それでもこの作品には、友情や愛情など普遍的なテーマが描かれていて、いま読んでも十分に面白い。20世紀の少女漫画の名作のひとつと言っても過言ではありません。

今回読み直していいなと思ったのは、本編が200ページぐらいの長さで長すぎないこと。連載漫画の場合、評判がよいとダラダラ続く場合も多いです。リアルタイムで雑誌を読んでいるときはそれでいいのですが、後でまとめて読むと冗長に感じすることも少なくありません。その点、このぐらいの長さだと読みやすくていいですね。

それでいて密度が高いので読み応えもあります。作中、ドイツ語の冠詞の認証変化を唱えている場面にニンマリしましたが、作品のなかに作者の学識の深さを感じさせるところも好きです。

最後のページに、主人公3人のその後が記されています。そのなかのひとりは東大卒業後、大蔵省に入省して女性初の事務次官(大蔵省というだけですでに時代を感じる)にまで上り詰めています。島耕作ではありませんが、官僚人生を読んでみたい気もします。まあ作者は描かないでしょうが……。

余談ですが、「笑う大天使」は、2005年に小田一生監督により実写映画化されて、主人公の3人は、上野樹里関めぐみ平愛梨が演じています。こちらは未見ですが、ずっと気になっている映画です。いつか見たい。

f:id:goldensnail:20190414063553j:plain