退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

篠原健太のコミック『彼方のアストラ』を読んでみた

篠原健太によるコミック『彼方のアストラ』(全5巻)を読んでみた。アニメ化作品を見て、原作漫画を読んでみたくなり紙の本を手に取ってみた。本作は2016年から2017年にかけてウェブコミック配信サイト『少年ジャンプ+』で連載されていたSF冒険マンガ。最終巻の第5巻だけ厚い。

宇宙への往来が当たり前になった近未来で、9名の少年少女たちが惑星キャンプへと旅立つ。宇宙旅行に胸を躍らせながら出発した彼らは予想外に事態に遭遇する。謎のワープにより宇宙空間に投げ出された生徒たちは、運良く宇宙船を発見するが、食料がなく帰還できないことがわかり絶望する。

しかし、遥か彼方の母星まで「5つの星を渡って食料を補給していく方法」を思いついた主人公たちは、メンバー全員が協力しながら様々な苦難を乗り越えていく。帰還の途中、彼らは遭難事故の犯人を見つけ、その裏にある壮大な陰謀を暴いていく……。

ジャンプ漫画では連載をダラダラと続けてストーリーが台無しになることも多いが、本作はきちんとプロットができていて最後まで緊張感を持って読みすすめることができる。これはSF的にはどうなのかと思う事柄もあるが、人工ワームホール、クローン人間、第2の地球などなど誰にもわかりやすく仕上がっているのは美点だろう。

キャラクターも魅力的。ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』にインスパイアされたて当初は少年少女は15人だったそうだ。それを短期連載にするために少年少女の人数を絞ったとのことで、当初設定によるキャラクター原案も載っていた。人数を絞り込んだことで、読みやすいなったのはまちがいない。

作画も素晴らしい。とくにメカがきちんと描かれているのがよい。本作でデジタル環境に移行した成果だろう。

少年少女の友情をしっかり描くとともに、彼らの成長譚であるとう少年漫画の王道を行く、いまどき珍しい優等生的な作品であり、誰でも楽しめるだろう。

私はアニメを見てから原作を読んだが、できれば原作を先に読むことをおすすめしたい。私がすすめるまでもなく、既にいろいろな賞を受賞している。玄人好みの作品かもしれない。ぜひ。

f:id:goldensnail:20210812115429j:plain:w400