退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

安彦良和『虹色のトロツキー』を読了!

以前より気になっていた、安彦良和のコミック『虹色のトロツキー』(文庫版、全8巻)を読了した。いまは亡き漫画雑誌「月刊コミックトム」に連載されていた”大人の漫画”である。

タイトルにトロツキーとあるから、革命家トロツキーが主人公の物語かと思いきや、昭和初期の満州国を舞台にした作品。主人公である日蒙混血の青年・ウムボルトは、当時メキシコに亡命していたトロツキー満州に招く「トロツキー計画」に否応なく関わることになり、それを通じて自身のルーツや父の死の真相へ迫っていく。

物語は主人公が満州国の首都・新京にあった建国大学に編入する場面から始まる。この建国大学は民族協和の実践を目指し、日本人や朝鮮人、中国人、ロシア人などの学生がいて国際色豊かであり、全寮制の独特な大学の雰囲気に惹きつける。

主人公が合気道の達人で活劇としても楽しめる。空手使いの日本軍人との闘いなど見どころは多い。

さらに石原莞爾辻政信甘粕正彦など満州に関わる歴史上の人物が多数登場のも面白い。とくに辻政信のキャラクターは安彦良和らしく愉快である。

物語は主人公がノモンハン事件に参加して戦死して終わる。まあ巻数からそろそろ終わりだろうと思いながら読んでいたが、終戦後、満州がどうなったのかを主人公の視点から描いてほしかった。後日談として戦後、主人公の息子が安彦らしき人物を東京まで訪ねてくるというオチがついているのは後味がよい。

この作品は歴史上・地理上の知識をまあま要求されるので、読みすすめるのはハードルが高いと感じる読者もいるかもしれない。各巻の巻頭に載っている地図を参照しながら読むといいだろう。骨太な漫画だった。