退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

森恒二のコミック『自殺島』を読了しました

森恒二によるコミック『自殺島』(全17巻)を読み終わった。2008年から2016年にかけて雑誌「ヤングアニマル」にて連載された作品。以前から知人に勧められたが、タイトルを見てちょっと苦手と思い込んで積ん読していた作品。

まず設定がぶっ飛んでいる。自殺未遂常習者たちが、日本政府により孤島に強制的に送り込まれる。島流しである。そんな彼らが、命の意味と向かい合い、さまざまな困難を克服しながら生きていく物語である。食料確保のため悪戦苦闘する姿が描かれており、筆者の経験を交えたサバイバル技術が解説されており、サバイバル漫画として読むことができる。とくに狩猟シーンは読み応えがある。

いたって真面目な漫画であるが、青年漫画ならでは残酷な描写や性的描写が多々あり、映像化するのは難しいと感じさせられる。とにかく「自殺島」というタイトルが強烈すぎる。物語の設定を見事に言い表したタイトルではるが、やっぱりタイトルで損していると思う。図書館にもなかなか入らないだろう。

作品は十分に楽しめたが、難を言えば登場人物が描き分けられておらず、「このひとはだれだろう」と思いながら読むのはストレスフルだった。

また冒頭で日本政府もひどいことやるなと思いながらも、こういう世界観なのだろうと納得していた。しかし、終盤で自殺未遂常習者を島流しにする非人道的な実態が世間に知られると、手のひらを返すかのようにそのプロジェクトが中止されて、主人公たち自殺未遂常習者たちが開放されるというオチだった。設定が甘いのではないか。