退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『その壁を砕け』(1959) / 中平康監督による社会派サスペンス

Amazonプライム・ビデオで映画『その壁を砕け』(1959年、監督:中平康)を鑑賞。脚本は新藤兼人、音楽は伊福部昭。主演は長門裕之。日活映画。白黒映画。

(あらすじ)東京で自動車修理工として働いく渡辺三郎(小高雄二)は、新潟で起業するためカネを貯めて自動車を購入する。婚約者のとし江(芦川いづみ)が待つ新潟に向けて自動車を走らせる。途中、三郎は一人の男を乗せて降ろすが、近くの郵便局で強盗殺人事件があり、その容疑者として逮捕されてしまう。都市江と会った警官・竜夫(長門裕之)は、三郎の犯行に疑念を抱くが……。


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冤罪が判明するまでを描く社会派サスペンスだが、脚本は凡庸でミステリーとしての捻りはない。それでも本作が魅力的なのは、各シーンを丹念に描いていく演出の素晴らしさであろう。

法廷劇で見どころがあるかと期待するも肩透かしを食う。優秀な弁護士が三郎の冤罪を晴らすために動くが、とくに目覚ましい働きを見せないずに期待外れ。結局、主人公・竜夫の機転と粘りにより冤罪が明らかになる。

本作は当時たくさん撮られたプログラムピクチャーのひとつだったのだろうが、中平康監督の演出の冴えが感じられるのは美点だろう。見て損のない映画ではある。

余談だが、DVDのジャケットは芦川いづみがフューチャーされている。三郎のフィアンセという役どころで、決して主役ではないが、芦川いづみファンをターゲットしたジャケットなのだろう。ちょっと面白く思えた。